くじら雲
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芝生の布団に寝転がって
五月晴れの空を見上げていたら
公園一帯を包み込む大きな影
くじら雲が町を横切った
頬をくすぐる風が心地よくて
いつの間にかうとうとしてら
くじら雲が近付いてきて
背中に乗せてあげるよと言った
やわらかな感触の背中にまたがって
透き通った青空を掻き分けて進んだ
見慣れたマンションや裏山も
上から眺めると全然違って見えるんだ
学校の屋上ではヒデカズ君が
おへそを出しながら昼寝していた
大声で呼び掛けたけど聞こえないみたいだ
明日の朝一番に自慢してやろう
あまりにも低空で泳いでいたから
デパートのアドバルーンにかすって
広告の文字が不自然に揺れていた
くじら雲と一緒になって大笑いした
知らない町まで行ってみたいな
太陽に触ってみたいな
くじら雲は大きく返事をすると
潮を吹き出して虹を作ってくれた
くじら雲はそれからたくさんの遊びを教えてくれた
雲細工やくじら泳ぎのコツ
歌ってくれた潮騒の子守歌は
お母さんみたいに温しい音色だった
くじら雲くれた壊れないシャボン玉を
地上のみんなに向かって吹いた
お隣さんや学校の先生にも
届くように力を込めて強く強く
もしかしたら話しても信じてもらえないかな
だけど僕はずっと友達でいるからね
くじら雲は照れ臭そうに笑うと
勢い良く尾ひれをふってくれた
ありがとう今日の事は大人になっても絶対に忘れないからね
遊び疲れて眠たくなった
目が覚めると僕は元の公園にいた
すれ違った散歩途中の犬は
壊れないシャボン玉をくわえていた
くじら雲が頭上を横切った