カモメの砦
湾鶴

青い目のカモメが鳴く
口をこぅと飽けて
喉を震わせず 
声もたてず
静かに
海の音を拾い

岸壁にならぶポプラを
透きとおった舌液に映し
カモメは鳴く

初めて砂をにぎった足の感触を
思い出しながら
今もまた波にさらわれる砂粒を
踏みしめながら

路面ラインの羽
四五度にひらかれたクチバシ
桜色の瞼に浮かぶ青い瞳

ぼくが馬に生まれていたならば

タテガミを脚に絡みつかせながら
芝生のしかれた大理石の馬小屋で

やぱっり前歯をむきだしにしながら
情けない声なんてたてずに
静かに口を飽けて鳴いているんだろうな

初めて母に横腹をなでてもらった
ことなんて思い出しながら

カモメは ヒヒンと 鳴く
海水はもう冷たくなってきた


自由詩 カモメの砦 Copyright 湾鶴 2003-09-25 00:32:14
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