平和
doon
甘く匂う古本の
時代向こう
激しく過ぎ去って行った
原爆という言葉の詩を聞き
その言葉
黒い人の群れを蘇らせる
海は今
青白い朝日の中
平和への邂逅に向かっていった
私達が呟く平和の中に
何の意味があろう
呟いた刹那
あの明かりを見ることもなく
鈍痛交じりの時間を過ごし
平和であるという
その平和
原爆の方からやってきたことも知る
絶望から這い上がった人々の
口は堅く
重い歴史の流れの中で絶え
語られることもなく散っていくのだという言葉
尊さではなく
恐怖だとも知れぬ
私達の呟く平和よ
お前は何を望むのだ
平和だという
もうすぐ体験者達は時代の上からも
去り行くだろう
もはや戦争はこの国の血を大量に流すこともなく
空も雲も
ゆっくりと時代にかまけて行くのだろう
死が分かつまで平和であろう
平和だ
と私はもう一度だけ呟かせてもらいます