平和
doon


 甘く匂う古本の
 時代向こう
 激しく過ぎ去って行った
 原爆という言葉の詩を聞き
 その言葉
 黒い人の群れを蘇らせる
 海は今
 青白い朝日の中
 平和への邂逅に向かっていった

 私達が呟く平和の中に
 何の意味があろう
 呟いた刹那
 あの明かりを見ることもなく
 鈍痛交じりの時間を過ごし
 平和であるという
 その平和
 原爆の方からやってきたことも知る

 絶望から這い上がった人々の
 口は堅く
 重い歴史の流れの中で絶え
 語られることもなく散っていくのだという言葉
 尊さではなく
 恐怖だとも知れぬ
 私達の呟く平和よ
 お前は何を望むのだ

 平和だという
 もうすぐ体験者達は時代の上からも
 去り行くだろう
 もはや戦争はこの国の血を大量に流すこともなく
 空も雲も
 ゆっくりと時代にかまけて行くのだろう
 死が分かつまで平和であろう

 平和だ

 と私はもう一度だけ呟かせてもらいます


自由詩 平和 Copyright doon 2009-05-05 10:23:57
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