去離音
木立 悟
干からびた冨を聴いている
背の高い真夜中の
影しかない影を知っている
どこへ向かうのか
右も左も無数にある
何も映らない鏡のプラカード
夜の目をした巨人が
窓からのぞきこむ
幸せを偽るためには
ポケットが足りない
誰もいない通りを照らす海
聞こえる色が
ただ聞こえくる
目を閉じ ひらくと
すべては斜め下からやってくる
淡くかがやくものたちが
最初のページをさがしている
静かすぎる街の天井
海を越える鳥の心音
標のための標の群れ
林のように立ち並ぶ
眠りにつこうとする鈍色の
まばたきと星を数える声
夜の目から夜の目へ
けだものは宙を馳せてゆく