「 祖母の部屋 」 
服部 剛

仕事から帰ると 
三ヶ月前に世を去った祖母の 
妹のI叔母さんが 
ソファーに腰掛け 
親父とお茶を飲んでいた 

母ちゃんが 
「お茶をもう一杯・・・」 
と言うと 

I叔母さんは 
「いえ、もうそろそろ・・・」 
と言い 

ゆっくりと腰を上げた 

親父の運転する車の 
助手席に腰を下ろした 
I叔母さんを 

母ちゃんと僕で並び 
お辞儀をして 
見送る 

今日は疲れていたので 
仕事の後 
喫茶店で仮眠をとってから 
帰って来たが 

少しの間でも 
会えて
よかった 

車の中から手を振る
I叔母さんの瞳の内に 
孫の帰りを待っていた 
祖母がいるようで 

I叔母さんから見た 
僕の瞳の内に 
妹が来るのを待っていた 
祖母がいるようで 

車の後ろ姿が 
角を曲がるのを
見送った後 

家に戻るとやはり 
祖母の部屋は 
がらんと 
誰もいなかった 








自由詩 「 祖母の部屋 」  Copyright 服部 剛 2009-05-04 22:14:02
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