明日の神話 於渋谷
一智

中央に描かれた
炸裂するものは
かつて
人だった
彼は 自らを剥き出しにして
語った
その言葉が
四辺に行き渡り
極彩色の 悲劇が上映される

しかし枠から零れ出す悲鳴に
道行く人は誰も
足を止めない

直截なけものが
あの男の頭をかみ砕けばいいのに
彩度の切っ先が
あの女の胸に突き刺さればいいのに

六十四年前の閃光が
渋谷を照らす
盲目のふりは できない


自由詩 明日の神話 於渋谷 Copyright 一智 2009-05-04 07:58:44
notebook Home