放下着
ホロウ・シカエルボク




縮みあがった胸に刃を当て
手遅れになる前に唾を吐いた
恐怖はいつでもそこにあるから
怯えぬことよりも逸らさぬことを勇気と呼べ
割れた碗のように過ぎ去った日
真摯と呼ぶために省みるなら
色眼鏡をかけて自分を見ろ
口上だけの今日を肯定するがいい
出鱈目に書き殴られた罫線の23時
記すことも消すこともままならず
ただ
数え上げるだけで済ませるのが定めなら
何故に胎盤など切り落としたのだろう
死者の心が容赦無く浸水してくる
腰の上まで昨日だけの者たちに飲まれながら
この暦は誰のためかと
遮光カーテンをさぐる隙間風を見る
生き延びることを決めたなら勇気と呼べ
恐怖はいつでもそこにあるから
縮こまった身体を疎ましく思うなら
まざまざと迫りくる明日の脳天を
見据えたまま今日の日を眠れ
麝香猫の爪痕の夢を見て眠れ
この世の進化は外れた
だけど
捨てたものなど無い




自由詩 放下着 Copyright ホロウ・シカエルボク 2009-05-04 00:07:55
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