岬
塔野夏子
岬の白い道を歩いてゆく
突端をめざして一歩一歩
五月の空は
高らかに晴れわたっている
風が吹く
記憶が吹く
波が聴こえる
記憶が聴こえる
岬は細く長く
なかなか突端にはたどりつかない
それでも一歩一歩
歩いてゆく
いつか夢で見たんだ
岬の突端から見た対岸に
きれいなガラスの山がそびえていたんだ
ちょうどこんな岬だったよそんな気がする
五月の空は
いよいよ高らかに晴れわたり
白くつづく岬の道を
一歩一歩歩いてゆく
風に吹かれて
記憶に吹かれて
波を聴きながら
記憶を聴きながら
個人サイト「Tower117」掲載