モザイク
佐々木妖精

少年誌の山を崩し
初めて手にしたビニ本をめくることで
成人女性の身体には
モザイクという器官があるのを突き止めた
未知の感情に駆られ 求めた場所は
服を着ていたり
声すらかけられなかったり
手もつなげなかったり
部屋が暗かったり
眼鏡を外していたり
服を着せていたりして
いまだ辿り着けないでいるが
モザイクにしか興味のない大人に
なってはいけない
煙草を吸うきみの視線が
黒く塗りつぶされていたとしても
きみの未来を覆うぼかしは
きみ自身の手で消せるんだ
有機溶剤でふやけた指は
つなぐこともできるのだから
そう目を細めてばかり
いるもんじゃない
うつ伏せの肘がしびれ
大の字で向き直った空に太陽がなく
薄暗いモザイクが停滞していようと
そこが空であることに変わりはないの
だから
そう空っぽな頭で
うつろな画面を 滲ませるのはやめなさい
きみは何も 悪くないのだろうし
悪いかもしれないのだから


自由詩 モザイク Copyright 佐々木妖精 2009-05-02 19:08:34
notebook Home 戻る  過去 未来