距離
エルメス

僕は不器用だから。

君に近づこうとしているのに、君が離れていくのが解るから。


もう、どうしようもなくて。

自分の力ではどうにもできないと、決めつけて、諦めて。


僕は、閉じこもることでしか、君に近づこうとできない。

僕は、拒絶することでしか、君に近づこうとできない。


間違った手段の先に、正しい答えはないのだろうか。本当に、ないのだろうか。

いいや、正しくすれば良い。ただ、それだけの話。簡単なこと。

でも、僕の中のほんのわずかな何かが、それを拒絶する。純粋なものしか受け付けない。


おかしいだろう。

純粋とか、正しいとか、そんな定義の貧弱なものに縋りついて。

お前は一体何がしたいんだ。


僕がもがいている間に、君は驚くべきスピードで僕から遠ざかっている。

そのスピードが、もしかしたら普通なのかもしれない。

きっと、僕は腐敗して、ねばついているから、何もかも遅いんだ。


君は光っているから、今でも君の存在がはっきり解る。

けれど、君は光速より速い。そのうち、見えなくなるだろう。


君の見ている景色は、歪んでいないだろうか。

それだけが、心配だ。


自由詩 距離 Copyright エルメス 2009-05-02 14:30:48
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