距離
エルメス
僕は不器用だから。
君に近づこうとしているのに、君が離れていくのが解るから。
もう、どうしようもなくて。
自分の力ではどうにもできないと、決めつけて、諦めて。
僕は、閉じこもることでしか、君に近づこうとできない。
僕は、拒絶することでしか、君に近づこうとできない。
間違った手段の先に、正しい答えはないのだろうか。本当に、ないのだろうか。
いいや、正しくすれば良い。ただ、それだけの話。簡単なこと。
でも、僕の中のほんのわずかな何かが、それを拒絶する。純粋なものしか受け付けない。
おかしいだろう。
純粋とか、正しいとか、そんな定義の貧弱なものに縋りついて。
お前は一体何がしたいんだ。
僕がもがいている間に、君は驚くべきスピードで僕から遠ざかっている。
そのスピードが、もしかしたら普通なのかもしれない。
きっと、僕は腐敗して、ねばついているから、何もかも遅いんだ。
君は光っているから、今でも君の存在がはっきり解る。
けれど、君は光速より速い。そのうち、見えなくなるだろう。
君の見ている景色は、歪んでいないだろうか。
それだけが、心配だ。