浮遊
高橋魚
いつもぽかりと空いている南の空の穴が
今日は埋まっている
穴は穴だと自ら信じなければ
穴でいられないのだと気付き
隠れたのでしょう
あなたは白球
土や草、空気の抵抗がなければ
死ぬまで転がり続ける
ことを知らずに
あなたは草を背もたれとして
くつろいでいる
いつしかあなたは
草になってしまうだろう
あなたは
あの穴のように
転がる運命を受けとめなければならない
満月も、三日月も、
月です
新月だって
月
満ちても欠けてもいないし
無くなってもいない
名前に食べられる前に
あなたは
宇宙へ帰らなければならないのです