Dance
百瀬朝子
レトロな花柄ワンピースに
包まれたあたしが踊るのは
腹黒のワルツ
赤いハイヒール三拍子に乗っかって
追い詰められていく
逃げ場のないダンスフロア
遮るものは何もないのに
きみの姿を見失って
やましいあたしはもつれた足で
ハイヒールが脱げちゃって
それでも踊り続けるから
ついにきみは姿を消しちゃって
あたしはギロチンで処刑されることになりました
犯した罪に名は無いけれど
腹黒さが暴かれたのだ
黒いものは黒い布で覆い隠した
それでも嗅ぎつける人がいる
おそらくその人も同じように黒いものを
腹の中で飼っているに違いない
ああ、せめて踊りながら逝かせておくれ
脱げたハイヒールはもういらない
素足で踊る少女になって
三拍子の鼓動が呼吸と共に止まるまで
長い髪の毛から鱗粉をふりまいて
甘い余韻を残したい
どうしてもあたしは裁かれる
腹には黒いものを抱えたまま
償いという正義を背負わされ
見世物にされることで許される
なんという不条理劇!
鋭い刃がいきおいよく落ちてくる瞬間
あたしは気づかずに逝かされるというのに
くりかえされる腹黒のワルツ
国境も時代も越えて
あたしのところにたどり着く
どうか踊りながら逝かせておくれ
願いは儚く三拍子にまぎれて消えた