この空だれかのうつろな羊
ひとなつ

悲しさとか寂しさとかで
小指を折り曲げてみても
いまの僕には
なにも痛いところがない

窓から出て行ったこの目は
遠くで迷える羊のよう

「でかけてくる」と言って
あなたに連れられたきり
帰ってこなかった

幸せはひとときのものだから
天使は指折り羊を数えた
しかし、見下ろした巨大な街に
迷い込んだ羊はあまりに多くて
天使は眠ってしまった

小指が折れたままの私も
そのまま赤ん坊のように

月の揺り籠で深いに眠りについた


…………………


もうすぐ悪魔が狩りにくる


自由詩 この空だれかのうつろな羊 Copyright ひとなつ 2009-04-30 21:53:52
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