はちはちよん

例えば犬や猫みたいに
せめて小さい頃の姿が
あいくるしいものだったら
愛することを知れたのに
愛されることを知れたのに

子供のころから
ずうっと考えていたこと
あたし本当は
毒なんて持ってたくないの

夏のあつい日
バナナの葉と同じ色をした
つなぎを着た男がきたの

長い睫毛を
木漏れ日にきらめかせて
とろけるように
やさしく笑った

そうしてあたしを
そっと抱き寄せたの

愛すること
愛されること
こういうことだったんだ
頭からしっぽまで
ぴりぴり熱くなった
はじめて涙が
出そうになった

あたし今日から
このひとの枕になる
眠りにつく前にはきっと
おやすみと言って
とろけるような
キスをするのよ
恐い夢みたって
目覚めたらあたしが
いつだって居るから

バナナの葉と同じ色をした
つなぎを着た男は
あたしをしっかりと
抱きしめたまま
街へ向かう
トラックに乗った

バナナの葉と同じ色をした
つなぎを着た男は
トラックの運転手に
最高の革だよ
この財布を一生使おう
と言った

頭からしっぽまで
ぴんと張って
どきどきどきどき
つめたい汗がたくさん出た

だけど、いいよ
革になって
一生このひとと
一緒にいよう
はじめて涙が出た


自由詩Copyright はちはちよん 2009-04-30 17:59:05
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