月の卵
あ。

いつだって瞬間を見ることが出来ない
気付いたらつんと澄まして
そ知らぬ顔で頭上を照らす
なめらかな曲線で出来た満月

夜にいるにはあでやか過ぎる
汚れることを恐れていないような
きっぱりとした純白でそっと
佇んでいるひとえだの小手毬

どちらも
たゆたう浅葱色の空に浮かび上がり
その姿はどこまでも気高く
でも決して冷たくはなく

小手毬はきっと
月が産んだ卵のいくばくかで
その花びらの隅々にまで光をたたえ
咲き誇るべき季節が通り過ぎたとき
回帰するのだろう

空が黒紫に色を落とす頃
白い月の卵は羽根を広げる




自由詩 月の卵 Copyright あ。 2009-04-29 17:26:20
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