月の卵
あ。
いつだって瞬間を見ることが出来ない
気付いたらつんと澄まして
そ知らぬ顔で頭上を照らす
なめらかな曲線で出来た満月
夜にいるにはあでやか過ぎる
汚れることを恐れていないような
きっぱりとした純白でそっと
佇んでいるひとえだの小手毬
どちらも
たゆたう浅葱色の空に浮かび上がり
その姿はどこまでも気高く
でも決して冷たくはなく
小手毬はきっと
月が産んだ卵のいくばくかで
その花びらの隅々にまで光をたたえ
咲き誇るべき季節が通り過ぎたとき
回帰するのだろう
空が黒紫に色を落とす頃
白い月の卵は羽根を広げる