星のたね
たちばなまこと

丘陵にひかる
白い壁とガラスの
その中に彼女はいて
いつもの声色で
「やあ」とほほえむ
黒い髪に白いバラ
ブーケにはビバーナムという
時の花
“ 私に娘が生まれたら
  このドレスを見せつけよう ”
なんて
思いながら縫い付けた巻き花たちが
ふふふと笑う
彼女という白い花
妹のような姉のような双子のような
私はそんな気分
朝日のような彼女の
今日は結婚式だよ
空のあなた
雨が浄化させた
初夏の色

誠実を語る彼の瞳は
あいもかわらず瞬いていて
太陽の時間に星が見えるのなら
こんな星だろうと
いつも思っていた
彼女をとりこむ星の瞳は
よりいっそう瞬いていて
手と手をとりあい
より添うふたりは
ひとびとに守られていて

うつくしくほほえむ白い花
しあわせのたねだと彼は言う
彼女にもらったハーブのたねから
みどりが生まれた私のベランダ
降りそそぐ光のもとに身を乗り出して
旅立ちの船着き場を
眺めていた

ふたりが蒔いたたねの
ひとつぶひとつぶが
おめでとう
おめでとう
集まる場所
ふたりを育てた木々たちが
目の奥で水をたたえながら
遠くで見守っている
私というひとつぶは
ほかのひとつぶたちと手をつないで
輪になって
ふたりの道しるべになるよ
だから
安心して進んでゆくんだ

あのまっさらな空で
天使がふたりを見ている
変わらない生活にも
変わってゆく生活にも
朝日はのぼり
星は瞬く
星のたねは今日
あたらしい庭でからだをあたため
そっと
眠るだろう



自由詩 星のたね Copyright たちばなまこと 2009-04-28 20:09:47
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