風ひとつ
フミタケ

風のにおいが愛の記憶を
ふいにくすぐる
手探りみたいにひろい夜を
小さなサーチライトひとつで
それぞれ欠けた月 
甘く噛み砕いて
帰れない二人を残し
だんだん溶け出していく
星と街のともしび

ちいさな声で何かつぶやく
おやすみの街で
細くしなやかな祈りの糸を
目抜き通りから路地へと
息を燃やしていく
それだけで 
電波はムスーに火の車
だんだんと空に
淡いラインが伸びてにじんでく

風がまたひとつ
僕らの体温に触れた

赤 青 緑 きれい
すすめ とまれ 眠れ たちあがれ

それぞれ欠けた月
甘く噛み砕いて 
電波はムスーに火の車
だんだん溶け出して 
淡いラインが伸びてにじんでいく

風がまたひとつ
僕らの体温に触れた



自由詩 風ひとつ Copyright フミタケ 2009-04-26 14:44:49
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