駅・紙屋町
たりぽん(大理 奔)

半世紀も祈り続けて
鳩が太っていく
公園の木は
故郷から引き離された子供のように
ぽつん、ぽつんと育って

生きていこうとする力に
種類なんか無くて
他人の生き様を非難できない
太った鳩が行く
ただ鳩は祈るのだ
僕を喰わないでください
僕を殺さないでくださいと

  みんなが僕のように
  怯えて、祈ればいいのだね
  みんなが、よわければいいのだね
  公園に植えられた木々とか
  太った鳩のように

あの夏の焼け焦げた街を
ゴトゴトと走った電車が
今日も僕を乗せて走る
いくつかの分岐装置ポイントを乗り越えれば
鳩の住処がみえるだろう

どこにもたどり着かない事を
恐れてはいけない
僕はただ、そのやり方で
やはり生きていこうと思う
本川を渡ってわずかな勾配を下ると
僕を乗せた電車は
十字路を左へと軋んで行く


自由詩 駅・紙屋町 Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-04-26 00:00:45
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