someone
霜天

どうでもいいことばかりに躓きたくなる
そういう趣味ではないのだ
「そんなもんだろう」と飲み込んでみせる

あなたを見ている人が、どれ程いるだろう
疲れ果てて掘った穴よりも空は深いというのに
潜り込むために引き摺った脚ばかりが
どうして見つかってしまうのだろう



夕暮れる
そのためにだけある街に
今日も揺られる個室は飛び込んで
吐き出される言葉はどこもそっくりだった

人はいなくなることができるかわりに
どこかでまたかたちになっていく、らしくて

しがみつけるほどの肩先に
そっと溜息を置いてみても
その重さはあなただけのもの、でしかなくて
結局あなたは、いなくなれないのだ


縋りつくために手摺を作った
階段はどこまでも滑らかだった
人間なんてそんなもんだね、と
泣きたくなるのはなぜだろうか



まっすぐに延びた環の中を進む
座り込んでしまった人に手を貸してみても
同じようにしか、回っていかない
時速いくらか、かたちのある速度で
ここでは、その他でしかないのだ
人は人で、街は街で、所属して、繋がって


誰か
見えますか
私たちはまた、かたちになっていく
いなくなって、繰り返して
そんなもんだね、と


自由詩 someone Copyright 霜天 2009-04-25 18:31:00
notebook Home 戻る