Night
百瀬朝子
死ぬのが怖いなんて錯覚だ
誰かに死なれることの方が
よっぽど怖いじゃない
ブランコに腰をおろした
背もたれのない背によりかかり
ブランコはあたしごとひっくり返る
首の後ろのほうを打ったみたい
どさっと鈍い音がして
首の後ろのほうで鈍い痛みがして
乾いた砂埃が舞い上がる
あたしは口を開けて砂埃を確かめるけれど
やっぱりそれはざらざらしていて
口の中がじゃりじゃり気持ち悪い
置き去りにされる心細さに涙
自分がかわいいだけならば
その涙は拭いなさい
あたしはひっくり返ったまま
夜の公園を照らす月の輪郭を確かめる
すこし欠けた月は
これから膨らむところだろうか
これから欠けていくところだろうか
あたしの心は孤独で欠けていくところ
あたしは今夜もひとりぼっちです
涙で滲んだ星はきらきらして綺麗です
欠けた月も滲んで満月に見えます、ああ
やっぱりあたしはひとりぼっちです
この涙が拭われることはありませんでした
夜の闇に絶望が浮き上がる
黒い輝きは希望を飲み込んだ
それでも孤独はぴったりとあたしに寄りそっているから
夜の仕業だと甘んじて
静かにまぶたを閉じなさい