急峻暮らし
サトタロ

わたし
これから布団にくるまりますから
そのあと縛ってもらえますか
バスに乗って既に三十分
バスはいよいよ山岳地帯に入り
蛇行する未舗装の道を
弾みながら進んでいた
バスには僕とあの娘だけで
あの娘は今や布団を羽織って丸まり
人面アザラシか手巻き寿司か
さあ縛って
そこに荒縄がありますから
バスが揺れるたびにあの娘は
空き缶みたいに床を転がった
眼光鋭い運転手はしかし
車内を気にかける様子もなく
ハンドルを握りしめていた
行く手に重たい雲が見えた
雨になるのだろうか
膝の上の骨壺が
カチカチと鳴っていた


自由詩 急峻暮らし Copyright サトタロ 2009-04-24 02:22:06
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