ことこ

傾いた傘はあんまりにも遠くて、わたしは濡れていた。ふたりとも濡れていた、の。つまり傘なんて役たたずで、わたしはあんまりにもしあわせで、しあわせな濡れかた。の、降りしきる、雨がさくらを散らすのです。零れていくのです。水滴が、濡れていく、わたしたち以外を、見つめているのでしょう、守ってなど、くれないのでしょう

みどり、は鮮やかに映えます。こんなにも都会なのに、池はボートでうまるのです。こんなにも都会だから。かぞく連れははなやかで、こども達の歓声を、木の呼吸は含みます。森のように、はだかるものだから、どこもひらけてなどいないから、きっとここでは、キャッチボールができないのでしょう、だからみんなボートに乗り込む、しかないのでしょう。池はしあわせで満たされています。午後はほほえみで満ち満ちています。またひとつ、歓声、

ゆれていく、水面に降りそそぐ花びら、の、いつまでも続けるわけにはいきませんから。結局わたしたちは、岸にとり残されたまま、手放していくのでしょう。ひとつ先の、かどを曲がって、もう振り返らない、ことを誓うのでしょう。降りそそぐ、からだ中を、ノックしては、感化する、雨粒の。えいえん、のくちびるのあとを、拭いさったころには。きっとまた、あなたのそばでは、歓声が、こだましているのでしょう、


自由詩Copyright ことこ 2009-04-23 23:15:06
notebook Home