水に触れる
あ。
鎮守の森の片隅に
忘れ去られた汲み場がひとつ
錆びたひしゃくを手に取って
したたる水滴を拾い上げる
時間をかけて器を満たし
波打つ水面をただ眺める
森の奥にいる神様のことも
このまちの歴史も
わたしは何も知らない
もう滴ではない液体にそっと触れる
心地よく冷却してゆく
ちゃらちゃらと涼しい音を立てて
一度静まった波が再び訪れる
誰かが確かに
何かを語りかけていた
それがわかるようになるには
わたしはまだあまりにも未熟だった
自由詩
水に触れる
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あ。
2009-04-23 22:31:36