光の夜道
服部 剛
友と杯を交し
日々の想いを
語らう夜に
酔いどれて独り
家路を辿る
夜の道すがら
何ヶ月も同じ場所に坐り
路傍の石と化した
家無き人の
汚れたシルクハットの
歪んだ凹みに
酔いどれは
幾枚かの小銭を
投げ入れた
深く頭を下げる
家無き人を通り過ぎた先に
電信柱に寄りかかる
恋人達が互いの愛を
密かに確かめ合っていた
路傍の石と化した人
と
身を寄せ合うふたりの
間の
街灯に淡く照らされた夜道を
酔いどれは
夜風と共に流離いながら
黙って通り過ぎる
( ふいに見上げた
( 暗がりの山間に顔を出す
( 観音像は
( 全ての秘密を
識
(
し
)
るように
( 静かに瞳を閉じていた・・・・・
酔いどれにとって
かけがえのない友と
杯を交し
全ての想いを語らい
世界で一番
哀しい幸福に包まれた
その日の夜
彼は黙々と、歩み続けた
街灯に淡く照らされて
何処までも伸びてゆく
光の夜道を
自由詩
光の夜道
Copyright
服部 剛
2009-04-23 00:48:04
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