蝶は虹になれない
ふるる

朝目覚めた蝶は
自分の羽根を見ない
ただ羽ばたくだけ
華麗な花々
             
つるつるした葉っぱ
きれいな雨水
存在をしたい
羽音が聞こえる

なんてきれいな蝶だろう
大きくて立派で傷もない
褒められても
虫ピンで刺されたらつまらない
                  
さようなら
実はわたし
夜はにんげんになるんですよ
蝶になるのは癖
だって朝日は悲しいもの
               
酔っ払い
華麗な花々の蜜は甘すぎて
ちょっと苦しい
早く卵を産みたいわ
沢山の卵
誰と交尾をしようかな
また今夜探そうかしら
                   
朝目覚めると
見知らぬカマキリが隣で寝ている
夕べは酔っていて
少し悲しかったから

何か寝言を言った?
うん、つらくて、さみしいって
聞いちゃったのね
聞いたからにはダメよ

ねえ
わたしの羽根はきれいかしら                           今日の仕事は上手くいくのかしら
こんなふうに蝶になったり
人になったりするのは
時々やりきれない

わたしはつるつるした葉っぱの
きれいな雨水
のひとつぶになりたかった
存在をしたかった
ただひとつぶの水滴として

そして消えたかったし
虹になりたかった



自由詩 蝶は虹になれない Copyright ふるる 2009-04-22 14:38:00
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