春の雨
鮎
箱庭の中に
ふりそそぐ春の雨は
ぎんいろの ひかり
松の木の葉の先の
あの ほそいほそいところまで
全部 ゆるす みたいに
丁寧に 丁寧に降る雨
小鳥が
木の下で雨やみをまってる
やわらかな苔のクッション
時計は 眠っているから
そっと しておくといい
隙間に うずくまって
誰にも みつからない ここなら
と と ぷ
と と ぷ
揺れてこぼれる
葉の先から 白い水玉
空気は濡れていて
空は明るい
古い木の窓枠
ほこりと 緑と 水のにおい
ゆるしてくれる?
ゆるしてあげる
シャンと薄いカーテンを引くと
小鳥はいっせいに飛び立って
松の枝は ちいさい銀色を無数に撒き散らして
揺れた
空が明るい
あたたかな
涙をのみこむときみたいに
胸がつまって
痛むたましいは
ああ きっと
こんな雨を
待ち続けていたんだろう