Day Dream(白昼夢)
渡 ひろこ

銀色のトラップが巡らされた森の中
ラピスラズリが妖しく光を放つと
遠吠えするサボテンやおしっこ臭いキャベツ人形たちが
深い眠りから目覚める
           *
レムの端っこで危なげなアルタイルと戯れていたら
細い銀のトラップに、足をすくわれてしまった
転げ落ちた森の闇で、3度高い不協和音の笑い声が響く
           *
ほうき星が星屑をまき散らすので、菩提樹の根元で寝ていたら
INVITAIONと書かれた手紙が舞い下りてきた
小枝の隙間から目を細めてのぞき込むクレッセント
落としてしまったと唇を噛む
           *
LA NOCHE DE TANGO  濃密な夜へのいざな
シルクのキャミソールに身を包むと
サボテンとキャベツ人形がしがみついてきた
つかまれた肩に血の色の薔薇が咲く
           *
ざわめく森を出てスクエアの影絵を踏みながら歩く
バスケットに押し込めたキャベツ人形は
葉脈から少しずつ漏らしながら、ナインスコードで陽気に歌い
クロムハーツをつけた獣の匂いを嗅いだサボテンが、狂おしく遠吠えた
           *
キアンティ・クラッシコの赤で満たされたグラスの向こうに
スリットから突き上げた内腿が、ライトに浮かび上がる
熱気がコアントローとなってステージに沁み出すと
バスケットからニュルリと伸びる長い舌
           *
ラ・クンパルシータ零れるリズムの一滴
欲しがる割れた舌先
蠢くバスケット
           *
 ─オトナノセカイハノゾケナイヨ─

バスケットの上から力まかせに押さえると
ターコイズブルーの悲鳴が
TANGOのステップに刻まれ
互いの棘を突き刺した
愛しき歪なフィギュアたちは
白い樹液にまみれて逝ってしまった



逝ってしまった
逝ってしまった
逝ってしまった
逝ってしま…



ふいに唇をふさがれた


口の中で飴を転がすように何度も繰り返していたのに


無音のモノクロームフィルムのように
目を見開いたキミが何かを叫んでいる


いきなり重ねられた手の熱さに気を取られて


キミの言葉も忘れてしまった、よ














自由詩 Day Dream(白昼夢) Copyright 渡 ひろこ 2009-04-20 20:27:16
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