さみしさ
石川和広

わたしの
話が終わる前に
あの方は去って
いかれました


あの、途中なんだけど
と言いかけて
わたしの話に終わりなんか
ないだろう

でもね
もしかしたら
勝手に
うまく終われた
かもしれぬよ


あの方が去って
わたしは
口をふさいでほしかったのかな
キスでもいいし
殺されるのは
嫌だが
まああの方に
殺してもらえるなら
いいか

でも
あの人の手袋や
淡い緑のコートを
血で染めたくない


だからわたしの
話の途中で
あの方が回転して
去っていったのは
よかった


だけど
言葉はいつ
流れを止めるか

いつまで
も吐きつづけて
なくなるなんて

そんな
そんな
言葉が
あるとかないとか


思うだけで
誰かの影をまねき
よせてしまう


自由詩 さみしさ Copyright 石川和広 2009-04-20 17:46:42
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