匙ですくって、召し上がれ
あ。

一度にたくさん、ではなく
そろそろ、と流し込む感じ

絶対濃度を持たない空気は
放流の力で簡単に色を薄め
侵入者だったはずのものが
気付けば当然になっている

さっきまで開いていた花は
知らん顔して眠りについた
わざとらしく大あくびをし
その瞬間を捉えようとする

何処か遠くで雀の声がした
どろりと鈍い足跡を描いて
眩しい光がふわりと溢れる
さっきまでの分厚い静寂が
夢だったのではと錯覚する

淡く優しい光に満たされる
少し古ぼけている銀の匙で
たっぷりすくって眺めたら
思い切って食べてしまおう

幸福に満ち溢れたこの朝を
身体とこころの隅々に流し
最果てなどないことを知る

抱きしめるべき美しい今を
匙ですくって、召し上がれ


自由詩 匙ですくって、召し上がれ Copyright あ。 2009-04-20 10:50:23
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