さよならまでの助走
木屋 亞万
これで最後になったって構わない
そう思って生きてきただろうか
そう思って飯を食い、
語らい、遊び、笑いあっただろうか
ここで途切れても
誰にも心配をかけないで
心置きなく終われるような時間を
生きてきただろうか
常に身辺を整理しておくのは
旅人ならば当たり前のことだ、
人はみな旅人だと言うけれど
残念なことに私は人ではない
それでも定住している、私は
せめて、移ろう季節のなかで
大事なものを大切にできるだけの
空間と意識を確保しておこう
そして、悔いの無いように伸びやかに
手足を伸ばし、関係を築き、言葉を綴ろう
私が終わっても、
これが最後でも
それでいいのだと
思ってもらえるように