さよならまでの助走
木屋 亞万

これで最後になったって構わない
そう思って生きてきただろうか
そう思って飯を食い、
語らい、遊び、笑いあっただろうか

ここで途切れても
誰にも心配をかけないで
心置きなく終われるような時間を
生きてきただろうか

常に身辺を整理しておくのは
旅人ならば当たり前のことだ、
人はみな旅人だと言うけれど
残念なことに私は人ではない

それでも定住している、私は
せめて、移ろう季節のなかで
大事なものを大切にできるだけの
空間と意識を確保しておこう

そして、悔いの無いように伸びやかに
手足を伸ばし、関係を築き、言葉を綴ろう
私が終わっても、
これが最後でも
それでいいのだと
思ってもらえるように


自由詩 さよならまでの助走 Copyright 木屋 亞万 2009-04-20 01:46:17
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