送別
霜天

結局
無いものは流せないのだ
光る丘で寝転ぶような、広がりを
繋ぎ止めておくことは、



思い出に縋るようにして歩き
引き摺るようにして、眠る
東京は優しかったよ、と言ったあの人は
しがみついた僕らと、どこで違ったのだろう

少し前に、手を振った
明日は少しだけずれながら
二人分の夕暮れを与えてくれる


どこまでが優しかったのだろう
手を合わせた人数分の秒針の進む、音
同じだけの、曲がり角


拡散する
世界と同じように
あなたの名前、という言葉が広がっていく
ここにも、
少しずれた朝にも



緩やかに別れていくことは
    緩やかに繋ぎ止められることでも、ある



無いものは、零せないままなのだ
結局
拡散したあなたのなかで
私という言葉が広がっていく


少しずれた朝
緩やかに、手を振る


自由詩 送別 Copyright 霜天 2009-04-18 20:08:22
notebook Home