詩も寝た頃に
木屋 亞万

草木も眠る丑三つ時には
言の葉寺の鐘も鳴らない

小粒の雨が纏わりついて
糸を引いている女の
肩から背中から人形を
操る天空の指のような
月の傾き、梟の
抑え気味に笑う声とか
つがいの犬の吠える声とか

梢の葉から、池に雫の落ちてゆく
動かぬ魚影、傾いだ小屋に
影と虚像が主となる刻限
仄かに赤い男と女が
肌を擦り合わせるように
何やら白い息を荒げる
そこは池の底の土、魚影の下の岩の影

隠された穴から白い糸が
月明かりにぬらぬらと照る
断片的な糸の影は、天に上った凧の糸
この世は月に吊るされた女と
地に繋がれた男ばかりで
つがいの人間は血だらけになりながら
何やら息を荒げている

種潰しが殺生ならば
荒々しい男女の交わりは
おぞましい殺人の儀
そこから生まれ落ちた我が身の
背中から伸びる糸は
糸として人生を終えた
寂しい兄妹たちの
彼岸からの糸電話


自由詩 詩も寝た頃に Copyright 木屋 亞万 2009-04-18 17:43:58
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