地動説の証明論文
コーリャ
砕けた星が
スウィング・バイしていく
いまにも
純潔は窒息しそうで
そのうえ
日記は白紙で
小説も空白で
そのことにきづけなかったひとびとは
拡散するすんぜんだった
天体の機械構造は
かろやかに電文をうち
サバンナには雨がふった
その雨は
鳥の言語を
ただ追体験したかっただけなのだ
そのひらいた両腕のかわりに
翼があったなら
どれだけよかったろう
鳥だけにしか
抱擁できないものを
ひとびとは
一番星と呼んだ
てくびが痛くなるくらい
夜を加速したから
ぼくという生物は
回転する
あの電燈のひとつのゆめみたいなもんだ
きらやかなオレンジ色した
ひとつの明晰夢
くもりガラスが底冷えして
透徹したのはだれのために
こびとがアイススケートしている
だけじゃないか
まるでフライングソーサーの軌道で
意味不明を
こおりついた宇宙にむけて
電柱は切り裂きジャックだったんだ
ひとびとが街を瞬断するのをとらえて
夜を推移しながら
幾何学的なナイフでせかいをやぶった
そちらのピースが朝で
こちらのピースで夜になったという
いろいろな外国のことばたちは
発音されたあとに
うめたてられる
たとえば
夜がかたちづくられるのは
空想の言語の埋立地からである
そして
草木のことばでは
朝がはじまっていく
朝という地域に芽生えた
たんぽぽを観察している科学者が
あるときぼくにいった
「この地域の
たんぽぽは
異星人なんです
というのも
ほら
あのたんぽぽ畑を
ごらんなさい
星雲みたいにみえるでしょう
じつはたんぽぽは
むかし
天の川だったんですね
まだ宇宙空間にいると
信じこんでいるのです
だから
さいしょは黄色くて
だんだん白熱して
ついには爆発します!
そうやって
違う星までたどりつこうとするのですね
でもその試みは
皮肉にも
地球をひとまわりして―――」
そのはなしをきいた
ぼくのメモ
『芽生えた
たんぽぽの
わたげは
ちょっと異星的な色をしていて
みずからを散葬しては
じゅんじゅんに
地動説を証明していく』