夜桜の扉
楽恵
音もなく
扉を開けて
君はどこへ行こうとしているのか
山の谷間にひっそりと
古桜
君は黙って立っていた
浅い夜に着替えるため
うつろに沈んだ夕闇に
青と紅は許しあい
混ざり合う
儚いまぼろし
髪にかかる紫の匂い
そして過去
足音もなく過ぎ去った夢よ
四百年目の生命が
落ちて山道の紺地へ溶ける
君の声がふと聞こえた気がした
自由詩
夜桜の扉
Copyright
楽恵
2009-04-13 11:23:18