野良犬
モリマサ公

びっこの野良犬の顔が父親の顔で
「まさこ元気か」と語りかける
精神科の待合室で半狂乱し押さえつける人を噛みちぎる老婆
これが妹

段ボールの下に新聞紙を敷き詰めてネズミたちが家族のようによりそう
埋まるように寝ている娘をみかける
母親はゴミ箱をあさって食べ物や服をひっぱりだしている
その表情はまるであたしのそれだ


殺し合いの生暖かい血の流れを拭き取っている家族も
冷たいタオルケットにつつまれただけの老人も
やさしいくたびれた柔らかい手の娘にも
キーはいつものようにひらき

日常という名のスペクタリズムがもうすでに
なんか今のあたしたちににはぜんぜんもう関係なくて
時々窓の外をとおる外気にあふれた奇跡を
この画面をみつめてるあなた方の背中へ


自由詩 野良犬 Copyright モリマサ公 2009-04-13 02:58:37
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