白い絵
ヨルノテガム
うちのハハは口汚い声で よぼよぼのうちのおじいさんを
ののしる
いつもおれは うちのハハをなぐりつけて
だまらせる幻覚をポケットの隅に眠らせている
おれがいないとき
誰が口汚い声を聞かなければならないのだろう
誰もいないし
確かめる術は何も思いつかない
*
曲を聴いている
試聴の曲を聴いている
世界を試しながら
寝るしかない夜の終わりを
曲を聴いている
試聴の曲を聴いている
*
絵ができる
抽象的な簡素な人影に 曲線を横に添わせ
全て白で塗られた絵ができた
何か祈りたくなるような 上手でもない絵が描けた
7つの人影に 鑑賞者は対峙させられる、8人だ
願いが叶えられたら
祈りは終わるのだろうか
願うことが怖い――――――――――
*
もうそろそろ うちのハハは うちのおじいを
口汚くののしる
今日はなぐれそうだ
でも そうさせないで下さい 神様。
*
あやとりの糸を編むような曲を聴いている
あやとりの糸が自分であるような試聴の曲を聴いている
世界は(ボク)のようなお気楽な変化を許してくれるだろうか
*
できれば8人目の住人は私にしてほしい、そして
絵の世界へ連れて行ってほしい
*
言葉と
絵と
音楽と
光と
影と
そんな芸術の神様が欠伸をしておられる
くすぐりに行こう
くすぐりに