聞き手の憂鬱
北村 守通

結局のところ地球は丸かった
何処に行こうが大した違いはない
何をしようが

  わめこうが
  泣き叫ぼうが

酒を飲めば翌朝には胃が重くなるし
煙草は口の中を乾かすのだ


  だから


どうするかを考えるかだなんて無意味であり
増してや
どうすべきかを考えるだなんて
考えもつかなかった


  しかし


それでも彼は
何処かにいるであろう
百億万の聴衆に向かって革命を訴えた
その目は
”希望”に満ち過ぎ
いささか楽観的で
聖書の終わりのごとき
数々の受難の末の
美しく奇跡的な逆転劇の
皮算用に酔いしれていたのである


  真理は重なり合って嘘を生み
  嘘は重なり合って真理と成す

  だから地球は丸く
  まわり続けるから
  走り続けなくてはならない
  さもなくば
  今頃我々は
  どこか遠くにほっぽり出されて
  目覚める必要はないのだ


自由詩 聞き手の憂鬱 Copyright 北村 守通 2009-04-11 12:37:50
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