ひとつ つづく
木立 悟
音のない息の浪が
寄せている
ひとつの曇の裏ごとに
くちびると闇はわだかまる
補色の先へ向かおうとする
水の上にしか映らぬ鳥
冬に軋る
冬は軋る
影の斜面の
影すぎる影
あり得ぬものがあり得るときの
手に重なる手のような笑み
はばたきかけてやめる鳥の
羽の背後に近づく暗がり
点りながら滅しながら
あらゆるものが在りつづけている
かたわらの冷たさ
おりたたむ火の色
まばたきに混じり
流れ落ちるものに重なる
ひとみよひとみ
唱は止まない
さししめす手に行方はなく
風は闇を抱いて明るい
荒れ野の冬に降る道をゆく
すがた失くした足跡の群れ
とどまらぬもの在りつづけ
とどまらぬもの在りつづく