ひとつ つづく
木立 悟





音のない息の浪が
寄せている
ひとつの曇の裏ごとに
くちびると闇はわだかまる


補色の先へ向かおうとする
水の上にしか映らぬ鳥
冬に軋る
冬は軋る


影の斜面の
影すぎる影
あり得ぬものがあり得るときの
手に重なる手のような笑み


はばたきかけてやめる鳥の
羽の背後に近づく暗がり
点りながら滅しながら
あらゆるものが在りつづけている


かたわらの冷たさ
おりたたむ火の色
まばたきに混じり
流れ落ちるものに重なる


ひとみよひとみ
唱は止まない
さししめす手に行方はなく
風は闇を抱いて明るい


荒れ野の冬に降る道をゆく
すがた失くした足跡の群れ
とどまらぬもの在りつづけ
とどまらぬもの在りつづく





















自由詩 ひとつ つづく Copyright 木立 悟 2009-04-10 10:51:26
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