つなぎ
あすくれかおす



街路を歩いた
抑揚は少なく
やりとりを続けていた
みしらぬおたがいを
たしかめあうために
たしかであるために


あの夜空の
どれか
星つぶてが
もしも死んだら
実況検分してみたい


星のむくろが
さらさらと飛んでゆく
上気した春から
夜の公園のにおいがする
鑑識たちはしゃがみこんで
わずかな足跡をさぐる
なるべく慎重に
ふちどりはこまやかにと
だけど
涼風だね
月が丸いねと
わりとそぞろに
ぶつぶつ言って


そんなふうに別々の場所で
おたがいへとへとになった仕事帰りに
星屑の散らばったツナギ姿で
帰りの電車で
ぼくたちはまた
ぐうぜんに出会う
きょう会えてよかった
ほんとうによかったと言い合う
夜の公園のにおいがするねときみが言う
ハニーマスタードのにおいがするねとぼくが言う
電車の窓の外では
まだ生きている星の
光にあふれている
どこか途中の
しらない町はふつふつと
音をたぎらせている
そんなふうにいつも
夜はふってん
ふっててん


そうして
どこからか
もしも がきこえるなら
いつでも
そしたら を続けられるといい
いつかつながることにも
いつかはなれていくことにも
きまったかたちはないのなら
そんなにたくさんを
信じなくてもいいんだ
どこまでものびる
おたがいの線を見つめながら
たしかめあうために
たしかであるために


両ひざの星々を落とし
安全靴をならし
そうしてぼくたちは
いつものタラップを降りる




自由詩 つなぎ Copyright あすくれかおす 2009-04-09 16:21:37
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