ひとつ おくる
木立 悟






かすかに
ひかり
あるく
浮かび沈むものを
なだめゆく道


座礁した船を残し
潮は干いてゆく
岩のような蝶のあつまり
分かれ解かれ 浪をたどる


冷めにくい日の
欠けた声の輪
枝に隠れた記号から
霧も遠くも ふたつの色に響き出す


氷の面が流れを堰き止め
やがて一枚の薄氷となり
蛇の背中を閉じ込めながら
道に夜を置いてゆく


枝がうつむくと
家があった
明けに灯る
ひとりの家


金に緑に
唸りはつづく
斜めに消える
銀を結ぶ手


庭十字
霧と雨の日
むらさき
ひとつ継ぐ息


兵士の目 色も無く
咲き乱れる花
ほのか 指ひらく
まぼろしを鎮め
唱いつづけ 在りつづける道

























自由詩 ひとつ おくる Copyright 木立 悟 2009-04-08 22:19:35
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