コインロッカー
靜ト
「死体はロッカーに入れないで下さい」
雑踏の中に立ち止まり、コインロッカーの注意書きを呟く。こっそりと。
東京の駅はなんとなく明るくて明らかに冷たい。
ふうん。 と私は思う。
ふうん。 それだけ。
むしろ不敵な笑みを浮かべるくらいだ。
宣戦布告されたみたいに。
たくましくなるにはなにか引き替えが必要だったのだろうか。
(お金を入れなきゃ死体は入れられないように)
でも
でも、と私は思うのだ。
こうやってこれに気付くだけでも良いじゃないか。
ぶつかる人の群れが舌打ちするのを聞きながら、
私は奇妙に満足した。