花霞
佐野権太

朽ちた木屑のかさなりを
踏みふみ
つづら登る春の里山

行く先々を導くように
萌える山吹
ふとした足元に
大人しくうつむく
鈴蘭の白、きみどり
ひとつひとつの
光りの具合を確かめる

ひと所に集められて
一斉に咲き散る花よりも
葉みどりや
浅く色づく蕾の時間差の奥に
偶然のように出逢う、花房

水色の風にささやく
あるかなきかの波長に
同化するように、歩む
足を止めて

ごらん
あの花霞の向こう
僕たちの渡ってきた橋が
あんなに小さく見える
 
 
 
 


自由詩 花霞 Copyright 佐野権太 2009-04-08 18:13:03
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