良心的な死神
三奈

『一人になるのが怖いの』




泡沫のように、貴女は消える。

その黒い目に、この青い空を焼き付けて

届きはしない、その空に恋い焦がれて

誰しも死ぬ時は一人だと

実感しながら消えていくのでしょう。

でも、大丈夫。

僕が、見ていてあげましょう。

貴女が『世界』という舞台から

消え去る瞬間を。

貴女のショーの幕が降りる瞬間を。

僕が鎌を振り下ろすのは

貴女が消える一秒前。

狩りとった貴女の魂は

僕が大事に保管します。




『ずいぶんと良心的な死神ね』




そう言って、太陽みたいに、貴女は笑った。


さぁ、心が決まったなら

契約書にサインを。


交わせば、例え何百年時が流れようと

貴女は一人になる事はありません。

ずっと、僕の傍で生きるのです。

汚れをしらない、魂のままで。

どうです?

二人で上から、世界を見るのも悪くはないでしょう?














こくりと可愛らしく貴女が頷く。


さぁ、交渉成立だ。


鎌を振り上げるまで

あと、一週間。


僕は離さないように

愛しい彼女の手を強く握った。


自由詩 良心的な死神 Copyright 三奈 2009-04-03 23:36:51
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