母の涙
小川 葉

 
 
蛇口をひねると
水の流れる音がして
母の声が聞こえる
何を言ってるのかわからないのに
それは声であることがわかる

蛇口をしめると
母の声は止む
雫が数滴零れると
泣いてるのかもしれないと
ふと思ったので

母に電話する
蛇口をひねるように
何でもないよ
心配ないからと言う
声が受話器から流れている

電話を切ると
やはり雫が数滴零れるので

もう一度
蛇口をひねると
とめどなく母の涙が
受話器から流れていた
 
 


自由詩 母の涙 Copyright 小川 葉 2009-04-03 03:13:54
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