海へ
石瀬琳々

また春の風が
額を過ぎた
ふっと
潮の匂いがした
ような気がする


なつかしい声


振り向くと
海がそこまで迫る
海は光る
反射して鏡のように


指を浸すと
あなたに触れる
その冷たい頬
瞳からこぼれる涙


なつかしい人


あふれて
いつか海は
指をすり抜けて
乾いた風になり


鳥が一羽
また一羽と
飛び立ってゆく
この心から
彼方から




自由詩 海へ Copyright 石瀬琳々 2009-04-02 13:37:27
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