雲肌の襖 ★
atsuchan69

冬鳥の啼く声も掠れ
野火煙る薄闇に
遠い鐘の音とともに
虚ろに舞う、
まばゆい欠片たち

山颪(おろし)の風に攫われる
か細い梢の一瞬の落花、
土に眠る豊かな彩りと
ひややかな水の命を
小さな花の色に映して

雪の果てに颯爽と散り、
蘗(ひこばえ)の匂う野山にも咲く
あれは月夜に朧に散った花弁
冴えた風のうごくさまに倣い、
止め処なく空谷を埋める

淡く紅をさした白無垢の、
ふるえる花唇のむごく幽かな血の色
静やかに息尽きる幻、その刹那に
光滲む雲肌の襖をひらけば
然も絢爛とひろがる春、桜絵巻










自由詩 雲肌の襖 ★ Copyright atsuchan69 2009-03-31 23:35:02
notebook Home 戻る