いろのないせかい
長谷川智子

真上から一直線に射す光
眩し過ぎる
けれど見開き続ける

岩陰から動かない
考える人とモアイ像のあいだみたいな固まりかたで
咲きはじめた雑草の花を踏みつけながら
土の「そこにある」頼もしさをかんじる
鼓動 波動
すごくイイ
茜色に空が染まるころ ようやく足がしびれていることに気づく
ぼくにはその赤々しさが判らない
いつかどこかの写真展で見た黒味のつよいやつ
ちょうどあのかんじ
暗い
いつか見たサーカスは光ばかりつよくて気持ち悪くなったし
ミラーボールを何度も素手で叩き壊す夢を見る
殴るたび黒ずむ手
ドロッ と
ヌルッ と
視界が 溶ける

ドロップアウト
ブラックアウト

パトカー 上に薄いグレーのフラッシュ
何故か憶えている
不思議なくらい感じる静けさ
続きそうで続かない何か
脈絡なくピンインがいくらか浮かぶ
こみあげる胃酸 ぼわっ と
悪寒まじりの万華鏡は止まらない

人形
にんぎょう
街をバラバラに歩く
ランダムウォーク
ウォークマリオネット
ぼくの目にうつるだけ
雑踏

TV 映らなくなれば ぼくの世界
深夜にただ ただ 見開く
軸 ブレる
なにもかもがどうでもよくなる
きえる

優しい黒
あたたかな黒
がむしゃらにもとめる
渇く
飢える
吞みこむ
また 溶ける
なくなりはしない

毛布の手ざわりだけが救い
まどろむ
コトン
コロン
カク ン
うなだれる青い月
水面ですこしゆれた



ぼくの手にはいつも色の見本がある



 2009/03/31 Tomoko Hasegawa


自由詩 いろのないせかい Copyright 長谷川智子 2009-03-31 06:03:42
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