計算的な衝動
百瀬朝子

髪を撫でた
わたしはあなたを支配する
やさしさを武器にねじ伏せる

ひとたび体を差し出して
されるがままにされてしまえば
ほんの少しの自由が得られる
けれども
代償を払い続けるのに
疲れてしまった
わたしは
めちゃくちゃに壊してしまいたい
形あるものすべてを粉砕したい
粉々に壊れて
わたしの手から離れていって
そう、
失くしてしまえば、
大切なものに成るはずだから

わたしはこの手で危めてしまいたい
拒絶する視線が突き刺さる快感
いけないことをしている感激と恐怖が
わたしを快楽へと突き落とす
そしてこの身は滅びに近づく

わたしは悪循環に溺れる魚
いくら泳ぎが得意でも
抗えない流れがある
溺れる魚はえら呼吸で
水の中でわずか
永らえただけだった

くちびるに触れた
わたしはあなたを壊して後悔したい
そうして大切なものなんだと
実感させてほしいだけ


自由詩 計算的な衝動 Copyright 百瀬朝子 2009-03-29 22:49:08
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